国際ロータリー第2720地区 熊本・大分

グローバル奨学金報告書 河村 陽一郎(2020年6月)

2020年06月26日

マサチューセッツ総合病院 脳神経外科
河村 陽一郎

 

COVID-19パンデミックによる3月末の研究室が閉鎖され、約10週ぶりに6月1日より研究を再開しました。研究棟内は全てマスク着用が義務付けられました。Social Distancingを守るべく、半日ずつの勤務となります。研究室のミーティング、セミナーは全てオンライン会議です。今は実験動物や物品の購入も制限がありますが、徐々に日常を取り戻し、少しでも研究を進められればと思っています。

 

10週間のself-quarantineは州や各行政区域の指導に従い、必需品の買い物や最小限の運動を除き、自宅に籠る日々でした。当初より8-12週の研究室閉鎖が予想され、いかに有意義かつ生産的に日々を過ごすかに苦心しました。普段の研究に役立つように基礎知識の整理を行い、色々な技術のアップデートを図りました。我が家の学童も夏季休暇と合わさり、6ヶ月学校のない生活です。楽しみにしていた夏季サマープログラムは中止です。現地校に通う彼らはオンラインで送られる課題に取り組む訳ですが、親の助けを必要としています。子の頑張りに私も大いに励まされました。また、日本では忙しく働いていたこともあり、家族との時間は限られていました。この期間に、子等の日々の成長や妻の苦労を共有できたのは収穫でした。今は9月からの学校再開が待ち遠しいところです。

 

6月1日からは人混み避け、大幅に増量した体重を減らすべく、片道10キロを自転車通学しています。同様に自転車通勤に切り替えた人も多く、リモート・ワークが可能な人達は自宅からの勤務を続けていることもあり、満員電車だった地下鉄の利用が激減しています。外出時のマスク着用が義務付けられ、ほとんどの人がマスクをしています。飲食店はまだテイクアウトおよび屋外での食事提供がメインのようですが、贔屓の客に支えられ踏ん張っています。Quarantine以前と全く異なる日常です。これから、経済活動の再開による感染の第2波、3波が懸念されますが、”New Normal”で被害が最小限になると良いのですが。

 

仕事の再開から数週もしないうちに、George Floydの死に端を発した”Black Lives Matter”運動の盛り上がりです。一部の暴徒化の報道がありますが、我々の生活圏では平和的な運動がメインです。現在は交差点などでプラカードを掲げる方をよく見ます。これに賛同する車はクラクションを鳴らしながら走行します。公民権運動後もアフリカ系米国人にとっての不公平・不平等は続いており、これはCovid-19の感染、死亡者数、さらには失業社数にも現れています。もちろん死亡事件自体が問題な訳ですが、背景にある不公平な社会への不満、COVID-19で有り余ったエネルギーが爆発する機会を探していたような印象すらあります。やはり白人は特権階級にあると言われても否定できない現状ですが、アフリカ系の地位向上、問題の解決には教育や医療福祉のアクセスが公平にならなければと思います。親の収入によらない教育機会の提供、教育現場での人種を超えた相互理解。さらに医療や福祉へのアクセスの是正など、人種に関わらない公平な社会への実現に向けて米国が前進して欲しいと思います。公民権運動以来のムーブメントを肌で実感できる機会ですが、この問題を乗り越えたより良い超大国の未来に期待しています。移民の増加、貧富の差の拡大が進むだろう日本にも、本件を参考にすべき点は多々あります。他人事でなく、自分の問題として捉えています。

 

また、盛り上がりにかけるものの、大統領選挙が近づいています。そんな中、大統領令によるビザ発給停止の報がありました。研究者目的のJ-1ビザ 等、例外があるようですが、多くに影響する問題です。この4月から留学や赴任予定だった方は、パンデミックによる入国制限ですでに相当の苦労をなさっていると思います。さらに12月までVISAが取得できないとなる、今後も交代要員が立てづらい、帰国できない方もいるでしょう。COVID-19で失業者の増えた中、自国民の雇用を守るための政策との説明があります。また、多くの研究者や労働者を送り込む中国への圧力もあるかも知れません。私は研究畑しか分かりませんが、米国外からの研究者も自分達の働きがアメリカの研究を支えているとの自負があるはずです。決して市民権を有していなくても、外国人労働者に支えられ、米国と発展していると思います。私にはBlack Lives Matterで問われている課題をあくまで各論として扱い、総論的に飛躍させられずに場当たり的な対応をした結果と感じてなりません。アメリカ、世界の発展という大局的な観点から、本政策の見直しを望んでいます。

 

COVID-19は現代社会、各国が抱える問題を浮き彫りにしました。Covid-19と間接的にBlack lives Matterの盛り上がりを含めて、同時に色々な面で社会を変革するチャンスだと思います。私も問題点をしっかりと把握し、より良い社会に向けて力を尽くしていきます。激動の時期に留学し、実験が長期間中断したことは研究にはデメリットでしかありませんが、大いに成長する機会となっています。ロータリー財団の皆様のご理解で留学生活を継続できていることを、心より感謝申し上げます。

 

グローバル奨学金報告書 河村 陽一郎(2020年6月)

左)通勤路、マスク着用と6フィートの間隔を空けるよう指導する看板
右)仕事再開の朝、以前は渋滞していた道路も閑散としている

コメント

  • コメント ( 1 )
  1. 宮﨑 仁史(日出RC)

    河村さんのリアルタイムのレポートに、とても有難味を感じました。TVニュースでは、切り取られた場面が繰り返し放映されるだけで、実感が湧きません。歴史を学ぶと同じように、他国のことを学び、これからの自国でのビジョンを確立したうえで、足下の活動に励まなければいけないと反省致しました。
    大変な状況下でのご研究が成果多いものとなりますように、遠地よりお祈りしております。ご家族ともにお元気にお過ごしください。

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