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地区補助金奨学生中間報告 高橋 春菜(第5回)

2019 ~ 2020年度 地区補助金(DG)奨学生
高橋 春菜

 

第5回 中間報告 (2020年1月1日 ~ 2020年1月31日)

1. 基本情報

カウンセラー(派遣側) 林明様(熊本江南ロータリークラブ)
教育機関 カリフォルニア大学バークレー校
専攻分野 ロースクール

 

2. 報告

秋学期が終わりに近づき、期末試験のシーズンとなりました。聴講しているDisability Rightsではレポートが課されました。不慣れな英語のため、簡単な文章でも作成するのに時間がかかります。幸いUCバークレーでは、英語を母国語としない留学生のために、ネイティブの学生がレポート等を添削してくれるピアサポートのシステムがあります。オンライン英会話の添削サービス等も利用しながら、時間を費やしてなんとか仕上げました。

 

試験直前の1週間は’Dead Week’と呼ばれ、キャンパスの雰囲気がピンと張り詰めます。アメリカの大学生は本当によく勉強します。学部1回生と一時的に同居したことがありましたが、在宅中はダイニングテーブルでずっと勉強しており、大学受験がそのまま続いているような生活だなぁと感心しました。成績はとても重要で、GPA(Grade Point Average、成績平均値)で奨学金の額が増減したり、退学になることもあるそうです。就職においては大学名よりGPAが重視されるとも言われます。そういうわけでDead Weekは皆一心不乱に勉強するのです。キャンパス内でアルパカに遭遇したり(ストレス対策のアニマルセラピー)、学生の群れが図書館を全裸で走ったり(Naked Run:ヌーディスト運動に由来するらしい謎のイベント)と、特別な体験もできます。

地区補助金奨学生中間報告 高橋 春菜(第5回)

(試験期間中のDoe Library)

 

地区補助金奨学生中間報告 高橋 春菜(第5回)

寝そべって勉強できるスペースもあります。

 

試験が終わると春休みに入ります。Root and Reboundという団体のイベントに参加しました。様々な理由で罪を犯してしまった人の、その後の人生の立て直しを支援する団体です。メンバーである元受刑者の方からは、「前科者」であることによる生きにくさを伺いました。46年ぶりの出所で社会の変化に戸惑ったこと、お金も支援もなかったこと、前科のせいで家が借りられなかったこと。しかし実は、前科を理由とする賃貸借契約の拒絶は違法です(加州Fair Chance Act)。権利は用意されているのに、ただ知らないために苦境におかれ再犯に及んでしまう。日本と同じ状況があります。

 

日本でも、前科のある方の就職活動は、履歴の空白の説明を求められたり、前科を明かせば敬遠されたりして、そう簡単ではありません(前科を積極的に告知する義務は原則としてありませんが、経歴詐称となれば別のリスクがあります)。就職できなければ生活費が足りず、悪循環に陥ります。カリフォルニア州でも同様の問題がありましたが、求職者に対する前科の質問を禁ずる法律(Assembly Bill 1008)ができて、前科のせいで就職できない問題は小さくなりました。これも権利運動の成果であり、アメリカでは法によって社会を動かせるダイナミクスを感じます。それは地域ごとの制度や法律の多様性に反映されています。

地区補助金奨学生中間報告 高橋 春菜(第5回)

 

その後、当団体のスタッフである弁護士に話を伺うことができました。低所得者、黒人・ヒスパニックが刑務所には多くいます。根本的な問題は、自分という人間の持つたくさんの側面のうち、「貧しい移民の子」「前科者」といったネガティブなレッテルに囚われ、自分の可能性を縛ることである。それを剥がしてポジティブな自己像を獲得するには、周囲のサポートが必要だということでした。

 

この団体はカリフォルニア州全域で活動しており、釈放間近の受刑者に対する地域生活のレクチャー、刑務所から無料で相談できる専用のホットラインを開設等様々な取り組みを行っており、これまで5500人にサービスを提供しています。いつもながら、アメリカの私的団体の活動の規模には圧倒されます。