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地区補助金奨学生中間報告 高橋 春菜(第1回)

2019 ~ 2020年度 地区補助金(DG)奨学生
高橋 春菜

 

第1回 中間報告 (2019年8月 ~ 2019年9月30日)

1. 基本情報

カウンセラー(派遣側) 林明様(熊本江南ロータリークラブ)
教育機関 カリフォルニア大学バークレー校
専攻分野 ロースクール

 

2. 報告

私は障害のある方のソーシャルインクルージョンをテーマに、カリフォルニア大学バークレー校にて客員研究員として研究を行っています。このたび研究補助をいただくこととなり、ロータリー財団の皆様に感謝を申し上げます。

(1)夏休み~インドにて

8月、途上国での障害のある方の状況を知りたく、休みを利用してインドへ向かいました。障害のある子どもを支援する NGO 「Latika Roy Foundation」を訪問しました。

地区補助金奨学生中間報告 高橋 春菜(第1回)

 

基本的には障害福祉サービスを提供する事業所ですが、弁護士が所属しており、法的支援や調査研 究を活発に行っている点が特徴的です。インタビューを行い、職業訓練所にてアクティビティに参加し、利用者やスタッフと共に時間を過ごしました。

 

地区補助金奨学生中間報告 高橋 春菜(第1回)

代表・弁護士へのインタビュー

 

弁護士は、自ら関心を抱く社会問題があったとしても、権利を侵害されている当事者が現れなければ訴訟を起こせません。その点で、通常は原告との「出会い」を待つ受動的な存在といえます。ところがこの団体の所属弁護士はそうではなく、利用者のネットワークを通じて「この問題に苦しんでいる人はいませんか」と働きかけて、原告を探し、訴訟を作りあげます。しかも弁護士費用は所属団体から支払われるため、原告が貧しくとも問題ありません。法律事務所ではなくNGOに所属することで、制度変革に向かって積極的に訴訟を創ることができるのは魅力的であり、日本にも持ち帰れる弁護士の新しいあり方であると感じました。

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作業療法士スタッフと

 

インドでは障害のある子には学校に通う権利が保証されておらず、小学校に入学することができないそうです。公的福祉サービスも整っていないようで、自費でまかなえる特に裕福な家庭でなければ、療育や支援は提供されません。就労についても、「障害のある人を雇用する」という発想は地域にほぼ存在しないため、学校にも仕事にも行くことができません。Latica Royでは障害のある子へ職業訓練を提供していますが、現実的には就職は非常に困難です。そこで大半の利用者は就職ではなく、なんと、自らビジネスを立ち上げる(Self-employment)ことを目的として訓練を受けるそうです。発展途上国では福祉政策は置き去りにされがちですが、今後の経済発展につれて、障害を含む多様な存在を包摂する社会となるよう願います。

 

(2)秋学期開始~バークレーにて

8月末、秋学期の開始に向けてバークレーに戻りました。同時に、瀧ガバナーよりロータリーのバークレー支部長にご連絡いただき、来月の例会に参加させていただくこととなりました。

バークレーはサンフランシスコまで電車で30分ほど、カリフォルニア州北部ベイエリアに位置する人口12万人ほどの大学街です。全米でも最初に障害者運動が起こり、ここから数々のバリアフリーな街のデザインやアイディアが誕生しました。現在でも、障害者の権利擁護を目的とする団体が数多く存在する土地です。

地区補助金奨学生中間報告 高橋 春菜(第1回)

バークレー校内にて、サザータワーを背景に

 

秋学期は「障害者の権利」(Disability Rights)という授業を聴講しています。学校や職場での差別、地域で暮らす権利、ウェブサイトの平等性などのトピックについて、障害者の権利擁護に特化した法律事務所DREDF (The Disability Rights Education & Defense Fund)の弁護士からレクチャーを受けます。9名と少人数のクラスであり、フランクに発言できる雰囲気の中、活発に議論がされます。アメリカ出身のロースクール生に混じって、スイス出身の車椅子の弁護士、LGBT活動家、そして日本の弁護士の私と、学生の顔ぶれは多様です。

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ある日の講義の様子

 

この講義では最後にミニ論文の執筆が課せられており、学生は各自研究を行います。私は刑事司法における障害者の権利をテーマに設定しました。教授からインタビュー先や読むべき論文等のヒントをいただき、慣れない英語での執筆に向けて準備しています。

 

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ロースクール図書館

アメリカの学生は在学中からインターンシップ やボランティアを行い、キャリア形成に向けた 準備に熱心に取り組んでいます。そのため、教授だけでなく学生からも紹介を受けてマイノリティ支援のネットワークを広げることができ、ここバークレーならではの利点だと感じています。

下は、障害をテーマとする映画監督と知り合い、試写会に参加した時の写真です。

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”Becoming Incurable”試写会にて
映画のウェブサイト

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Human Rights Center の研究会にて