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ロータリー財団奨学生最終報告書 山崎 智美

2017-2018 年度グローバル補助金奨学生
山崎 智美

 

最終報告書

1. 基本情報

カウンセラー(派遣側) 林明様(熊本江南ロータリークラブ)
カウンセラー(受入側) Mr. David Hirst(Rotary Club of Pocklington & Market Weighton)
教育機関・専攻分野 University of York(英国)、
MA in Post-war Recovery Studies(修士過程)

 

2. 学業面での成果

 私は2017年9月から2018年9月までの1年間、ロータリーの奨学生として、ヨーク大学の修士課程・戦後復興学コースで平和と紛争予防/紛争解決について学びました。このコースは「座学と実践をつなぐ」ことを目標に、①インタラクティブな授業、②フィールドトリップ、そして③ワークプレイスメントという3つ特徴的なカリキュラムで構成されています。
 まず①の授業では、講師による講義やクラスメートとのディスカッションに加え、毎回の授業のテーマに関連する専門家(外部講師)による講義やワークショップも行われました。1学期の授業では紛争の原因や影響、および紛争の影響を受けた社会での調査の方法について、2学期は国連や国際機関などがどのように紛争に介入しているかや、それらの事業の提案・計画書の作成法について学びました。②のフィールドトリップでは、1学期の終わりの2週間、コソボを訪れ、戦後復興に取り組む機関や団体で働く方々にお話を聞きました。実際に現地を訪れることで、戦後のコソボに残された課題の複雑さを痛感しました。同時に、課題を克服するために行動を起こす人々に多く出会い、コソボの戦後復興はこのような人々の努力の積み重ねによって、少しずつでも着実に進んでいくだろうと感じました。③のワークプレイスメントは、大学での授業のない3学期に学生自身が見つけた機関・団体で行われます。私はNSAMIZIという、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)ウガンダの事業実施団体で研修を行いました。この団体は2009年よりウガンダの南西に位置する難民居住区で事業を実施しており、現在は生計向上、水と衛生、環境、燃料とエネルギーへの安全なアクセスの4つの活動を展開しています。私は広報担当として団体の活動をソーシャルメディアで発信し、同時に修士論文研究のためのフィールド調査も実施しました。
 このコースでの学びの集大成である修士論文研究では、NSAMIZIの活動地の一つであるナキバレ難民居住区にて「難民の自立と統合におけるソーシャルキャピタルの役割」に関する調査を実施しました。ナキバレは10カ国以上からの難民が共存する大変ユニークな難民居住区ですが、部族や国籍の異なる難民間、および UNHCRをはじめとした援助機関と難民間の結びつきは弱く、これが、UNHCRやウガンダ政府の目指す「難民の自立」が進まない要因の一つとであると考えられます。UNHCRとウガンダ政府が先導する難民問題への介入が、全く新しい活動を一から作り上げるのではなく、難民による自発的なイニシアチブを尊重し、その継続と発展を後押ししていくことで、「難民の自立」はより効果的に促進されるのではないかと思います。

 

3. ロータリーとの交流

 今回の大学院留学を通じて、私の受け入れクラブであるRotary Club of Pocklingtonはもとより、ワークプレイスメント先のウガンダでは、Rotary Club of MbararaやNakivale Rotaract Clubの会員の方々とも交流させていただく機会がありました。
 カウンセラーの David 氏をはじめ、Rotary Club of Pocklingtonの皆様には本当に良くしていただき、大学院での学習の相談や、ヨークおよび周辺での観光・イベント等にも何度も誘っていただきました。クラブの34周年記念ディナーや、イギリス発祥の喜劇であるPantomimeなど、Rotary Club of Pocklingtonの皆様との思い出は数え切れません。おかげでイギリスの文化や歴史について多く学ぶことができ、本当に充実した1年を過ごすことができました。ウガンダでのワークプレイスメント中には、Rotary Club of MbararaのAllan氏が空港まで迎えに来てくださり、ウガンダの文化等についてもたくさん教えてくださいました。クラブの例会にも参加の機会をいただき、会員の方々の積極さと志の高さには感銘を受けました。また、ナキバレ難民居住区内にあるNakivale Rotaract ClubのPaul氏からは、ナキバレでの難民の生活や課題、クラブの活動等について詳しく教えていただきました。このクラブが5月にオープンした仕立屋の専門学校は、アメリカのロータリークラブ・Roseville Rotary Clubとの協力のもと、生徒の作った商品をアメリカ国内で販売しています。ロータリーのネットワークの壮大さと可能性を実感しました。

 

4. 今後について

 10月1日(月)からの3ヶ月は、IOM(国際移住機関)のケニア事務所でインターンシップを行います。この機会を通じて、国連がどのように国際問題に取り組んでいるのか、しっかりと学んできたいと思います。また、将来、世界の平和と紛争予防/紛争解決に貢献するため、大学院で身につけた知識をどのように実際の社会で活かしていけるか、他に自身が身につけるべき資質や要素は何か、探っていきたいと思います。
 最後になりましたが、ヨーク大学・戦後復興学コースで学ぶ機会をいただき、2720地区パストガバナーの永田様をはじめ、会員の皆様には心より感謝しております。大変にありがとうございました。来年1月以降の進路は未定ですが、現場での経験を重ね、1日でも早く紛争予防/紛争解決の分野で活躍できる人材となれるよう、誠心誠意努めてまいります。